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【読書感想文】デンドロカカリヤ/安部公房著

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【読書感想文】デンドロカカリヤ/安部公房著



皆様ごきげんよう、中村です。
本日の読書感想文は、安部公房氏の『デンドロカカリヤ』です。

いつもはここでウィキペディア先生を引用するのですが、
何を隠そうこのデンドロカカリヤにはwikiが無いのです。
本の背表紙に書かれている説明も「コモン君が、見馴れぬ植物になる話」という一行だけ。
しかし、この一行が全てなのです。「コモン君が、見馴れぬ植物になる話」。

とにかくタイトルの響きが好きですデンドロカカリヤ。
フランツ・カフカ氏の『変身』の様に、人が人以外の何かに変化してしまう話です。
『変身』と『デンドロカカリヤ』の明確な違いといえば、
『変身』の主人公グレーゴル・ザムザは何の前触れも無く、
自分の意思とは関係無く突然虫になってしまったのに対し
『デンドロカカリヤ』の主人公コモン君は変化の予兆があった上で
最終的には自分の意思でデンドロカカリヤになる事を決めたという点でしょうか。
主人公の精神面が変身する原因の一端として考えられるという点では、
もしかすると『変身』よりも中島敦氏の『山月記』の方が性質的には近いかもしれません。
国語の授業でお馴染みの山月記、面白いのでオススメです!変身は読んでると辛くなります。



『デンドロカカリヤ』は、今までに紹介してきた本とは少し性質が違っているかもしれません。
物語がどーのこーのというよりも、哲学的な要素がとても強く描かれている様に思います。

全体の流れとしては、
———-
コモン君は、ある日突然自分の顔が裏返って自身が植物になっていくのを感じる
(顔を表に戻すと人間に戻る)

植物化の”発作”のせいで、彼女(?)と職を失う

植物から人間に戻る様子を植物園の園長に目撃され、付き纏われる様になる

園長から「植物化は珍しい事じゃない」「自分の植物園で暮らさないか」
「他にも多くの仲間が私の植物園で暮らしている」と誘われる

コモン君は園長を殺そうと考えるが、
最終的には抵抗する気力も無くなり植物園でデンドロカカリヤとして生きる道を選ぶ
———-
こんな感じです。



例によって気になるところをいくつか。

「何故って……、そら、ダンテの神曲にあるじゃないか。自殺した人間が樹になるんだよ。」


地獄に堕ちた人間は、地獄にあっても決して罪の意識を持たないものなのだ。ここには罰だけがあって罪はない。してみると、とコモン君は判断せざるを得なかったわけさ。つまり俺は知らずに、既に自殺してしまっていたのかもしれないね。


結局、植物への変形は、不幸を取除いてもらったばっかりに幸福をも奪われることであり、罪から解放されたかわりに、罰そのものの中に投込まれることなんだ。


『デンドロカカリヤ』より引用

自殺=植物化=罪からの解放・罰への投身
というのが、コモン君の考えの模様。
しかしそうすると、コモン君は何らかの”罪”を抱えている事になります。
ですが、コモン君が何か”罪”を抱えているという様な描写はありません。

となると、考えられるのは
『コモン君自身が己の”罪”を認識していない』
というパターンなのではないかと思います。

つまり、もう既に”罪”から解放されてしまっているという事です。
「コモン君が、見馴れぬ植物になる話」は、
「コモン君が、罰を受けている話」なのではないかなぁと思いました。

幸福を全て失い不幸を取除き切っている訳では無いので、コモン君が今まさに”罰”へと身投げをしている最中の場面を切り取っているのがこの話なのかなと。



こういった話で謎となる事が多いのが”語り手”の存在です。
今回の語り手は、コモン君の友人でした。
コモン君が部屋を引き払う際、代わりにその部屋を借りるという一連の流れでのみ登場します。
にも関わらず、何故かこの語り手はコモン君の身に起こった事を最初から最後まで把握しているのです。
コモン君は全てを語る前にデンドロカカリヤへとなってしまったので、
もしこの事を”語り手”へと話した人物が居たのだとすれば、ありえるのは園長ですかねぇ…しかしそれでも全てを語るには不十分。
なので、本当に『謎』な存在なのです。

コモン君の話を始める際、語り手である彼は

さて、コモン君のことを想浮べてごらん。無理だって?なに、どんな具合にでもいいんだよ。その名前のとおりでいいんだよ。コモン君はコモン君さ。ぼくの友達だったんだよ。なに?君の友人だって?むろんそれでもいいさ。要するにコモン君でありさえすればいいんだよ。

『デンドロカカリヤ』より引用

と言っていました。
コモン君であればどんなコモン君でも良いというのは奇妙な話ですよね。植物化に悩むコモン君は一人しかおらず、彼の経験談を語るのであれば想浮べるのはそのコモン君でなければならない筈ですのに。
「その名前のとおり」と言っているので、コモン君の名前からコモン君の正体を探るのも楽しそうです。



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以上、読書感想文でした!

本日のモデルは、伊藤瑛美里さんです!
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