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【読書感想文】海と毒薬/遠藤周作著

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【読書感想文】海と毒薬/遠藤周作著



皆様ごきげんよう、中村です。
本日の読書感想文は、遠藤周作氏の『海と毒薬』です。物騒なタイトル!

『海と毒薬』(うみとどくやく)は、遠藤周作の小説。1958年に発表された。
太平洋戦争中に、捕虜となった米兵が臨床実験の被験者として使用された事件(九州大学生体解剖事件)を題材とした小説。テーマは「神なき日本人の罪意識」。第5回新潮社文学賞、第12回毎日出版文化賞受賞作。


<あらすじ>
引っ越した家の近くにある医院へ、持病を治療しに通う男。男はやがて、その医院の医師・勝呂(すぐろ)が、かつての解剖実験事件に参加していた人物であることを知る。
F市の大学病院の医師である勝呂。彼は、助かる見込みのない患者である「おばはん」が実験材料として使われようとすることに憤りを感じるが、教授たちに反対することが出来なかった。当時、橋本教授と権藤教授は医学部長を争っていたが、橋本は前部長の姪である田部夫人の手術に失敗し、死亡させてしまう。名誉挽回するために、B-29の搭乗員の生体解剖を行い、勝呂と戸田も参加することになる。

(ウィキペディアより引用)

今回の作品は青空文庫さんに掲載されていないのですぅ…。
ですので、全文読みたい方は買ってください!



『海と毒薬』というタイトルの通り、この物語には”海”の描写が幾度か登場します。
そして、その”海”を表現するのに『クロ』という単語を使う場面が何度かあるのですが、その『クロ』は一つではありません。

「黒」と「黝」。

この作品では、海を表現する『クロ』色を使い分けしているのです。

本来「黒」の読み方は『クロ』・「黝」は『アオグロ』なので、正確にはそれぞれ微妙に違う色です。
それならばその微妙な色の違いを表現する為に二つの「クロ」を使ったのではないかとも思えますが、
作中の他所にて『アオグロい』というのを「蒼黒い」と表現している箇所があるので
「黝」という字は単に微妙な色の違いを表現する為だけではなく、別の目的であえて使用しているのではないかと考えられます。

それでは、二つの『クロ』は一体どの様に使い分けをされているのでしょうか?

その理由を考える為に、
作中で「黒」と「黝」がどの様な場面で使われていたのかを考えてみたいと思います。



とりあえず、”海”の色に関して「黒」と「黝」が使われている箇所を抜き出してみました。
今回は勝呂に関するものだけに絞って抜き出しております!全部じゃないけど!!
そして、この後の説明の便宜上それぞれに数字を振っています。

1)
勝呂は乳白の靄のずっと向こうに黒い海を見た。海は医学部からほど遠くないのである。


2)
医学部の西には海がみえる。屋上にでるたびに彼は時にはくるしいほど碧く光り、時には陰鬱に黝ずんだ海を眺める。
すると勝呂は戦争のことも、あの大部屋のことも、毎日の空腹感も少しは忘れられるような気がする。


3)
海は今日、ひどく黝ずんでいた。
<中略>
戦争に勝とうが負けようが勝呂にはもう、どうでも良いような気がした。
それを思うには躯も心もひどくけだるかったのである。


4)
闇の中で眼をあけていると、海鳴りの音が遠く聞こえてくる。
その海は黒くうねりながら浜に押し寄せ、また黒くうねりながら退いていくようだ。


5)
夢の中で彼は黒い海に破片のように押し流される自分の姿を見た。


6)
「なにしてんねん。お前」
「なにも、してへん」
だが戸田は勝呂がそこだけ白く光っている海をじっと見詰めているのに気がついた。
黒い波が押しよせては引く暗い音が、砂のようにもの憂く響いている。


『海と毒薬』より引用

大体こんな感じです。先程提示した様に、二種類の『クロ』が使われている事が分かるかと思います。

では次に、どんな状況の時にこれらの表記が使われているのかを考えてみたいと思います。
ちょっと上の抜き出しだけでは状況が分かりにくいものについて補足を少々。

———-
4)
アメリカの捕虜を生体解剖することに誘われた後のシーン。
断ることが出来たのにも関わらず断らなかったことを勝呂は自覚している。

5)
4での一連の流れがあった夜の事。

6)
生体解剖を終えた後のシーン。
———-

4・5・6のシーンで使われているのは「黒」です。
そしてどのシーンも、人を生かす為では無く実験の為に切り開くという出来事に関するものです。
単純に考えて、「黒」は勝呂が”罪悪感”を感じている時に使っているのではないでしょうか?
そう考えると、テーマにある「神なき日本人の罪意識」にも掛かるんじゃないかと…!!
それらを踏まえて抜き出し文を改めて見てみますと、
医学部と”罪悪感”は近い位置関係にありながらも”罪悪感”には靄が掛かっている(1)、
勝呂は”罪悪感”が押し寄せていったり退いていったりする葛藤を感じている(4,6)と
言い換える事が出来るのかな、と思います。



「黒」を使う定義を上記で述べたものだと仮定しまして。
そうなると次は「黝」です。
ここではまず、「黝」という漢字自体に注目してみたいと思います。

黝という感じをよーく見てみてください。
<黒+幼>で構成されているのが分かりますか?

「黒」は、”罪悪感”の象徴です。
「黝」は、”罪悪感”に”幼さ”がプラスされています。

それを踏まえた上で、先程抜き出したものをもう一度見てみましょう。

2)
医学部の西には海がみえる。屋上にでるたびに彼は時にはくるしいほど碧く光り、時には陰鬱に黝ずんだ海を眺める。
すると勝呂は戦争のことも、あの大部屋のことも、毎日の空腹感も少しは忘れられるような気がする。


3)
海は今日、ひどく黝ずんでいた。
<中略>
戦争に勝とうが負けようが勝呂にはもう、どうでも良いような気がした。
それを思うには躯も心もひどくけだるかったのである。


『海と毒薬』より引用

どちらも、思考を放棄してはいませんか?

“罪悪感”とは、思考を巡らせるからこそ生まれるのだと私は思います。
つまり、思考の放棄とは”罪悪感”からの”逃げ”(=責任を負おうとしない幼さの表れ)なのではないかと私は考えました。

5の直前で、勝呂は自分が生体解剖を引き受けた理由について
「どうでもいい」と一見思考を放棄しているかの様な発言(思考)をするのですが、
夢の中で見た海は「黝」では無く「黒」であった為、心の底では罪悪感を捨て切れずにいるのではないでしょうか。



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…とまぁ、今回は特定の色だけに絞って考察を行ってみました。





ここまで書いといてなんですが。





めっっっっっっちゃ不完全燃焼!!!!!!!!!!
根拠が!根拠が少なすぎる!!穴だらけ!!!ロンパだったら即効で打ち抜かれてるレベル!!!!!
いつもより長編でじっくり読み込めなかったんですという言い訳うぐぅ



不完全ついでに最後にひとつ。
この作品では、海を表現するのに『クロ』以外の色も使っています。

「そやろか。俺達はいつまでも同じことやろか」
勝呂は一人、屋上に残って闇の中に白く光っている海を見つめた。
何かをそこから探そうとした。

『海と毒薬』より引用

ここで書かれている「闇」の色を「黒」と「黝」のどちらで考えるか。
そしてこの「白」とは何を表しているのか。

これらの考え方で作品の終わり方の印象が大分変わるのではないかと思います。
ちょびっとばかしヘビーな内容ですが、読み甲斐のある作品ですので機会がありましたら是非読んでみてください!

以上、読書感想文でした!!

本日のモデルは、桜川紗弓さんです!
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